投資とトレードの明確な違い

基本中の基本なのですが、株の本を読んでも、明確に定義してあるものは見当たりません。
「投資とトレード」あるいは「投資と投機」とも言いますが、ここでは「投機」ではなく
「トレード」と表現を統一して説明をします。

あなたは、投資もトレードも呼び方が違うだけで、同じものだと思っていませんか?

たとえば、1 年後の株価が分かるとして、大幅な値上がりをしている株なら、
何をしても儲かると思っていませんか?

もしそうだとしたら非常に危険です。

それは「投資」と「トレード」を区別しないまま、自分の資金を投入していることになるからです。
では「投資」と「トレード」、その違いについて今からお話をしますので、読んでください。

最初に結論から言います。

投資というのは、価値に資金を投じる行為です。
トレードというのは、価格に資金を投じる行為です。

もう少し噛み砕いて表現するならば、

企業価値に焦点を当てるのが投資です。
現在の株価に焦点を当てるのがトレードです。

これ以外の要素は、枝葉末節以外の何者でもありません。
それでは、それぞれをさらに詳しく説明します。

■ 投資とは

まずは投資の方から。

投資は、よく中長期投資などと言われますよね。
数年単位の長いスパンで見ることが多いです。

長いスパンで見なければいけないと言うわけではないのですが、短いスパンで企業
の価値がすぐに反映されることが少ないので、比較的長期の視点が必要になってきます。

ただし、時間軸が長いから投資だと言うわけではありません。
あくまでも、資金を投じる人の焦点が「価値」に向いているのか、そうでないのか だけが判断基準です。

投資では、安い株を見つけてきて、高く売るというバリュー投資と言われるものがありますよね。
また、成長余地の高い企業に目をつけて、今のうちに資金を投じて置くという、グロース投資と
言われるものもあります。

いずれにしても、他の人に見えていない、その企業の「価値」に焦点を当てていることは間違いありません。
本来の価値、もしくは将来の価値に比べて、現在は「安い」と判断しているわけです。

今そこにはまだ存在していない「価値」というものに資金を投じて、その価値が現実化するまで
見守っていると言う点で、農耕的なイメージと言ってもいいかもしれません。

誰にも見向きもされていない土地が、肥沃な土地なのかどうかを調べ、種を蒔き、
芽吹きを待ち、晴れの日も雨の日も、じっくりと果実が大きく育つまでじっくりと見守る。

そしてその後、誰よりも大きな果実を手にすることが出来る。
そんなイメージで間違いありません。

その投資に対し、トレードとはどのようなものなのでしょうか?
次はトレードの説明に移ります。

■ トレードとは

トレードで大切なことは、企業の価値ではありません。
企業の価値という視点は、トレードには関係ありません。

トレードで大事なのは、現在の株価です。
現在の株価が全てです。

どういうことなのか、詳しくお話します。

株価チャートというものを見たことがあると思います。
チャートは、時系列でならべた株価の集合体です。

一瞬一瞬で動く株価の値動きを、視覚的に見やすくしたものがチャートです。

■ チャートの向こう側には生身の人間がいます。

さて、それでは株価は何故動くのでしょうか?

参考までにひとつ適当なチャートを持ってきました。

このチャートは全体を通して右肩上がりになっていますね。
ということは、株価が上昇しているということなのですが、小さな波の上下を繰り
返しながら右肩上がりになっているのがわかりますよね。

では、その波は何故できるのでしょうか。

なぜまっすぐ直線にならずに波を打つのでしょうか。
簡単なことですが、意外と答えられない質問かもしれませんね。

聞けば当たり前のことなのですが、そこに人間がいるからです。

チャートは、時系列でならべた株価の集合体と先ほど言いましたが、本質的には、
チャートは、時系列でならべた心理の集合体なのです。

あなたが見ているチャートや、取引画面の向こう側には、同じように自分の利益と
幸せを願っている数百人、数千人の人間がいるのです。

そしてそれぞれの人たちが、自分の判断で、これからその株が上がるか、下がるかと考えて、
売買を繰り返しているのです。

チャートというのは、言い方を変えれば、その銘柄に注目している、生身の人間の
心理が表れたものだといっても過言ではありません。

では、「トレードでは現在の株価が全て」というのはどういう意味なのでしょうか。
さきほどの投資は企業の価値を判断し、お金を投じるという行為に対して何が違う のでしょうか??

■ チャートパターンは、人間の心理パターンです。

ここで、もう一度チャートを見てください。

たくさんの人間の心理が、一つ一つのローソク足を形作っているのだとしたら、
あなたには、このチャートがどのように見えますか?

画面の向こうにいる、さまざまな思惑の人の声が聞こえてきませんか?

チャートと言うのは、株価の値動きの集合体なのですが、味気ない機械的なものなのではなく、
とても人間くさいひとつのストーリーなのです。

そして、トレードというのは、人間心理が作り上げる波の行き先を、確率で予測する行為そのものです。

株価が今現在の株価までどういう動きをしてたどり着いたかを分析し、
その中にあるパターンを発見したとします。

そのパターンの時は、次の瞬間株価が上にいくことが多いということならば、買いでエントリーする。

逆ならば、売りの判断をする。
そこにあるのは、企業の価値ではありません。

常に目の前にある株価だけです。

判断基準は、その企業が何をしているか?ではなく、現在その企業の銘柄を売買している生身の人間が、
何をどう判断するか?という心理のみです。

チャートのパターンは、人間の心理パターンと言うわけです。

そのため、もちろん100%期待したとおりに動くわけはありません。
エントリーした次の瞬間は、株価がどちらに動くかは分かりませんから。

しかし、過去の動きからある程度の方向を予測をし、それを積み重ねることによって利益を出していくのです。

■ 投資は農耕、トレードは狩猟

なぜ、過去のデータ、過去のパターンが有効かと言えば、人間の心理というのは、
昔も今も一緒だからです。

先ほど投資は農耕のイメージであると言いましたが、
それに対して、トレードは狩 猟的イメージだといえるでしょう。今そこには無い未来の果実がどうなるか?
ではなく、 すでに目の前にある獲物を捕らえるために自分がどう動くかを考える。

トレードにおいて、よく「勝つ」「負ける」という表現が使用されるのも、
このような狩猟的イメージから来るのかもしれませんね。
畑を耕していて「勝つ」などという表現はしませんから。

さて、現在は、投資とトレードがゴチャゴチャになっている人が多いために、
何をしているのか分からない人が多いようです。

あなたは大丈夫でしたか?

投資でしたら、企業の価値に焦点を当てて、その価値が表に表れるのを見守るべきですから、
トレードのように、同日中に売買が終了することは、まずありません。

トレードで、たとえばデイトレードなどをするなら、企業価値の要素は無視してもよいです。
株価の動きを観察し、自分がここだ!と思った株価に入ってきたらエントリーをするのです。

■ 投資とトレードは全く別物です。

まずは、投資とトレードとは、見るところが全然違うということを理解してください。

あなたが株式市場に資金を投じるときには、「投資」を行おうとしているのか、
トレードを行おうとしているのかを、自分の中で整理してから行うべきです。

そうでないと、どうなったら資金を引き上げるのかが決まってきません。

投資の焦点ならば、企業の価値や方向性に変化があった時が判断すべき時です。
トレードの焦点ならば、株価の変化が、自分の予測値を超えた時が判断すべき時です。
当然ですが、自分の予測値から上ぶれしても下ブレしても、それが出口です。
結果は利益確定と損切りで、まるで違いますが。

この「投資」と「トレード」の違いだけ分かっているだけでも、
あなたが他の投資 教育教材を見たときに

「これは投資の話をしている」
「こちらはトレードの話をしている」

と判断できます。

ではまとめます。

投資とトレードは全く別物である。

企業価値に焦点を当てるのが投資です。
現在の株価に焦点を当てるのがトレードです。

この違いをしっかり認識してくださいね。