トレーダーの社会的意義とは?

「デイトレードで株をやっていることは友人には秘密です。

仕事やビジネスと違って、社会に対して価値を生んでいるとは思えないし、
自分だけ儲かればいいやと思っているように見られるのが嫌なので・・・。」

このように、自身の心に株取引に対しての罪悪感というか、ブレーキをかけてしまっている人がいらっしゃいます。
実際に株の売買をする場面で、「俺の行為の社会的意義はこれだ!」と、宣言する場面はありませんが、自分がどのような行為のために毎日努力をして、勉強をしているのかという『自分の行為に対する意味づけ』は場合によっては、その人の株取引の成果に大きな影響を与えることが心理学的にも示唆されています。
「自分のやっている行為が世間的に望ましいことである」と思えているか、「社会的価値のないことを目指している」
と、自分自身で思っているかによって、その学習の進度、土壇場での力の発揮、モチベーションの維持、全てに影響を与えるからです。

世間では、株取引について偏見をもたれることは、まだまだ多いのかもしれませんね。
株取引自体について、世間一般の知識が圧倒的に不足していますし、『デイトレーダーの社会的意義』といった突っ込んだ議論については、まったくもって正確な理解が日本社会に普及出来ていない現実は悲しいものです。

株式の長期投資については、企業の成長に資金提供を行うという形で貢献するという意味で、価値のあるものだといえますし、その社会的意義は、比較的理解しやすいものだと言えます。
しかし、デイトレーダーのように短期的な売買益で収益を稼ぐトレーダーが、どのような価値を生んでいるのか、どのような社会的意義を果たしているのかは分かりにくいため、世間一般に理解が浸透していないことは仕方がないことかもしれません。

しかし、トレーダーは社会に対してきちんと価値を提供していますので、誤った見方であなたがトレードで稼ぐ可能性をみすみす狭める必要はありません。

トレーダーの社会的価値、それは「流動性の提供」です。

流動性とは、簡単に言うと好きなときに売買ができるかどうかです。

例えば、あなたが賃貸用の不動産物件を持っているとします。
急に現金が必要になり、その物件をすぐに売却できるかというとそうではないですよね?
すぐに買い手が現れればよいですが、場合によっては1年たってもなかなか売れないということもあります。

しかし、株式は不動産と違って、すぐに現金へと換金がし易いので、流動性資産と呼ばれます。

株式に流動性があるのは、デイトレーダーのように日々、株式を売買している人がいるからといえます。

もし、市場に参加しているのが長期投資をメインとした投資家ばかりだと、好きなときに 株式を売買することは難しいかもしれません。

トレーダーが株式市場に対して流動性を提供しているのは、紛れもない事実です。

未公開株式よりも、上場株式の方が何倍も価値が高いことは あなたもご存じだと思います。
だから、企業が株式を上場して公開企業になる時に、創業者は持っている未公開株式が上場株式に変化することにより莫大な利益を手にします。
これは、なにを意味すると思いますか?

それは、「流動性のない未公開株式」と「流動性の著しく高い公開株式」との価値が、同じ企業であっても、何倍も、場合によっては何十倍も価値が異なるからこそ、未公開企業が上場する時に、株価が何倍も、何十倍も値上がりするのです。

もし、あなたがソニーの株を買うかどうか検討しているとして、ソニーの株が、売りたくなってから、
最大1年間以上売れない可能性があるとしたら、そのソニーの株を買いますか?
同じソニーの株式で、買ってから1年間まったく売ることが出来ない株と、いつでも時価で売れる株と
選べるとしたら、どちらの株を買いますか?
いつでも時価で売れる流動性の高い株の方が欲しがるひとが多く、株価が高くなることは容易に想像できますね。

日本の多くの優良企業の株が、証券取引所で毎日売買されていて、その流動性が著しく高い、これこそが日本が一流の資本主義国でいられる重要な要素であり、その上場株式の流動性を支えているのが、毎日株式を売買している機関投資家や証券会社の自己売買部門、そして、私達のようにトレードを行っている個人投資家なのです。

つまり、短期売買を行う人がいるから、上場株式の株価が高い状態で居られるのです。

また、このような見方もできます。

『あなたが株を売買することは、誰かの幸せを応援していることになります』

これはピンと来ないかもしれませんが、あまり複雑に考えずに読み進めてください。

株に対して、あまり知識がない人は、株というのは東京証券取引所や証券会社に株券のような在庫が大量にあり、それを売買しているようなイメージを持っていることがあります。

しかし、実際には証券取引所や証券会社と売買をするのではなく、市場に参加している人の間で売買がされます。(信用取引など、証券会社が持っている株を借りることはありますが)

例えば、あなたがソニーの株を買ったとすれば、どこかの誰かがソニーの株をあなたに売ったということになります。

あなたが、手に入れたソニーの株を売ったとすれば、どこかの誰かがそのソニーの株を買ったということです。

どこかの誰かが、個人のトレーダーや投資家なのか、機関投資家なのかはわかりませんが、
需要と供給があるから株式市場での売買が成り立つわけです。
買ってくれる人がどこかにいるから、その人は持ち株を売ることができるのです。

そのため、あなたが売買をすることは、誰かの需要を満たしているといえます。

そこには、

「世界に誇る日本のソニーだから、将来のために投資をするならソニーの株を買いたい。」
「来週あたりソニーの株が騰がりそうだから、今買っておきたい。」
「今持っているソニーの株価がどんどん下がってきてしまった。これ以上の含み損には
 精神的に耐えられないから、今の時点で売ってしまいたい。」

こんな風に思っている人たちがいるということです。

彼らは、自分の幸せのために、自分の意思で売買をしていることでしょう。
その彼らの需要をあなたが売買をすることで満たしているのです。

自由意志で参加できる市場において、誰かの需要を満たしているのですから、
タンス預金なんかより、よっぽど価値が高い行為といえます。

顕著なのは、暴落相場になった時などです。
暴落相場の時には、市場のほとんどの人がパニックになり売りに走っています。
この状態で誰も買い手がいなかったら、毎日ストップ安が続きます。
この時に、なんらかの理由で買う人間がいるからこそ、その日の株価が付き、
パニックが収まるきっかけを提供することが出来るのです。
この時、「どうしても損切りをしたい」という人に、流動性を提供する人こそが、
相手に損切りを可能にしてあげることが出来ます。
このことが、「誰かの重要を満たしている」ということの顕著な例になります。

株のことを良く知らない人たちの偏見に左右され、あなたがトレードに心理的なブレーキを
かけてしまうのは、もったいないことです。

シンプルに、

「自分が売買することで、誰かの需要を満たしている。つまりは、誰かの幸せを応援してあげている。」

と考えてみてはいかがでしょうか。
そして、この短期売買をするトレーダーの社会的意義は、誰かに説明して理解してもらう必要はありません。
友人や会社の人に、「俺は株式トレードをやっている。」と宣言して、それを尊敬して貰う必要は特にありません。
誰が株式の短期売買にどんなイメージもっていても関係はないのです。
あなたが、自分の行為に自信をもって、その成果を伸ばしていくことができる、そのことが大切なのです。